対 談
前社長坂井 泰久
&
新社長臼井 栄仁
バトンリレーまでの
カウントダウン、対談。
「受け継ぐ」「託す」、
それぞれの思い
- 坂井
- 2019年の8月1日、私が社長を退任して、いよいよ臼井さんが新しい社長になりました。臼井さんに「社長やる?」って初めて打診したのは、今から5年くらい前のことでしたよね?
- 臼井
- はい。僕より上席の方がいらっしゃるので迷いもありましたが、それよりも坂井社長の後任ならぜひ受け継がせていただきたいという気持ちが大きく「やりたいです」とお答えしたのを覚えています。もともと働いていた飲食業界を離れ、坂井建設(現在のSAKAI株式会社)に中途採用されたのが約10年前。不動産業の経営者になりたいという夢があり、入社するときに「3年で独立します!」って率直にお伝えしていて。社長からは「3年じゃ短い、5年はいなきゃ!」と言われましたけど(笑)。
- 坂井
- そう(笑)。独立するのはいいけど、自分に代わる人材を育ててから辞めてほしいし、会社にいる間にできるだけ勉強をしておいたほうがいいと思ったからね。創業するまでにいろんなことを学ばなきゃいけないけれど、起業してから勉強するのはキツいものだから。
- 臼井
- そんなことを言ってくれる社長は、そうそういません!
- 坂井
- 私は私で、50歳になったら社長を退こうと考えていて。そう考え始めたのが、臼井さんに社長を打診する数年前。当時はまだアジアに新しい法人を立ち上げたばかりの時期で、私にも会社をちゃんと引き継ぐための時間が必要だったので、50歳を目処にしたんですよね。そんな流れの中で、せっかくだったら私の後任をやってみないかと聞いてみたわけです。臼井さんは実直で、決めたことは確実に前に進めていくストイックさがあるし、何よりブレない。経営者がブレると付いていく社員がとても苦しむことになるので、不安を感じさせない経営者になれると思いました。
- 臼井
- お話をいただいてからは、「自分を変えなきゃ」と、真剣でした。人の気持ちをより良く理解できるようになりたいとか、数字ももっと読めるようになりたいとか、「これしなきゃ、あれしなきゃ」ということばかりでしたが、幸い準備する時間をたくさんいただけたことに感謝しています。以前は社長を兄貴のような存在だと感じていましたが、今は少し違って、「近くて遠い人」。近づいてみればみるほどスゴい人で、恐れ多くて、一緒にいるのがイヤな時期もあったくらい(笑)。
- 坂井
- そんな風には全然感じられなかったけど(笑)。
- 臼井
- それくらいプレッシャーだったんです! 最近は残りの時間が限られてきて、逆にできるだけ一緒にいたいという気持ちでいっぱいですけどね。少しでもそばにいたいです。
- 坂井
- 一緒にいながら、私が考えている「いい会社」というのは常に伝えてきたよね? それは、社員にとってやりがいや成長があること、そして儲かること。資金力がないと、研修や資格などの学べる環境を整えられませんから。さらに、社会貢献ができること。以前は社会貢献という言葉にピンとくるものがなかったんですが、それができない会社は続かないとわかってきて。かといってゴミ拾いや清掃をするというのは違う。建設業をやっている以上、最大の社会貢献はお客さまの家づくりに携わり「ありがとう」と言われることだと思うんですよ。つまり、仕事で社会貢献をするということですよね。やりがいや成長があり、儲かっていて、仕事で社会貢献ができている会社でありたい。これが坂井建設の経営理念です。
「SAKAI株式会社」が、
大切にしたいこと
- 臼井
- 坂井建設の基本理念「感謝・誠実・革新」は、社員一人ひとりに対してのメッセージですよね。
- 坂井
- そう。毎日しあわせに生きようとするなら、感謝のできる人が最もしあわせそうだと感じたので、まず自分から「ありがとう」と言える人たちと一緒に仕事ができるといいなと。そして、感謝の気持ちがあれば誠実な仕事ができるはず。このふたつで充分なのですが、あまりにも時代の動きが早いので、変化にストレスを感じないことも大切です。そういう意味を込めて、「感謝・誠実・革新」という基本理念を軸に据えました。
- 臼井
- それから、「住まい造りを通じて、本物の住宅と本物のサービスを提供する」という社是もありますね。これには社長の家づくりへの思いや愛情を感じます。
- 坂井
- 「本物の住宅」というキーワードは、かなり重要。何をもって本物かというと、いちばん大切なのは、雨漏りせず地震に強い家であること。2番目が住み心地、住まい心地。そして3番目にデザイン。この順序で考えるのが、坂井建設にとっての本物の住宅です。だからこそ、徹底的に見えない部分にこだわりたい。構造が確かな家は10年後、20年後、30年後に絶対に差が出るから。長く住み続けた人がその差に気づいたとき、「やっぱり坂井建設に頼んで良かった」と言われる会社じゃないと、この業界で生き残っていけないと思う。
- 臼井
- 35年の住宅ローンを組んで家を建てていただいて、お引き渡しをして、支払い終わった時にガタがきているような家じゃ話になりませんもんね。「うちの家はビクともしないね」「うちの家は強いよね」と言われてこそ、価値がある。
- 坂井
- 坂井建設を創業した私の父 坂井明は、腕のいい大工でもあって、父が建ててくれた家を見ると築30年だろうが築50年だろうが構造躯体がまったく悪くなっていないんです。それって、素晴らしいこと。だから、私が父の会社を引き継いだ後、安くて良い家を建てられたらという思いから「サラダホーム」をつくりましたが、価格は安くても構造躯体への考え方、こだわりは同じです。
- 臼井
- 社長も大工の経験がありますし、坂井建設は社内に工務部があり、大工を抱えているところも強みかと。
- 坂井
- 昔から大工は、弟子をとって職人を育てるというシステムで成り立っていて、私もある親方に弟子入りして育ててもらいました。ところが今は労働基準法をはじめとするさまざまな問題があり、師弟のシステムが崩れつつあって、職人さんがどんどんいなくなっています。建設業は職人さんで成り立っていて、世の中にとても必要とされているのに。だったら会社で大工を抱えて、ぶっきらぼうに「見て覚えろ」というのではなく、丁寧に教えてあげられる環境がつくりたかったんです。職人が社内で育てば、これは大きな財産と言えますよ。
守ります!
そして飛躍します!!
- 臼井
- そうやって坂井社長が思いを込めて築いてきたもの、そして目指すべき方向を、僕はまったく変えるつもりがありません。なおかつ縮小路線ではなく、社長が切り拓いてきた拡大路線で、しっかりと業績を伸ばしていきたいです。
- 坂井
- 臼井さんにはスピード感もあるからね。周りの人が付いていけるようなスピードで、よく見てブレーキをかけながら進めば、社員たちはきっと「この人に付いて行こう」と思ってくれると思いますね。
- 臼井
- 社長になるという話を引き受けたときは、ただやりたい、経営者になりたいという一心でしたが、今はまたちょっと違ってきていて、坂井社長の思いを無にしないために命をかけなきゃいけないっていう覚悟があります。社長になって好き勝手やりたいとは思ってないし、自分の野望があるわけでもない。ただ、坂井社長が大事にしてきたものを、同じだけ大事にしながら、守り拡大していきたいんです。引き継ぐ以上、たいして変わらないとか、規模が小さくなったとか、潰れてしまったとか、そういう風になってしまったら期待に応えたことになりません。期待に応え続け、忠義に生き続ける中に、僕の行動や指標が出てくるはずだと考えています。そして、行動するときには必ず、社長の思い、つまり社是や基本理念に照らし合わせて、そこに繋がっていることであればやるし、繋がっていなければやらない。意思決定についてはとてもシンプルに考えられるようになりました。社員にもそれを伝えていきたいですね。
- 坂井
- 思考も似通っているし、一緒にいる間にさらにいろんなことが確認できているから、あとは任せる(笑)!
- 臼井
- 社長、いつも「やっといて」とか「任せる」とか、多くを言わないですよね(笑)。これは僕だけじゃなく社員みんなに対してですけど、そこに粋を感じます。
- 坂井
- 昔はね、任せるんじゃなくてほったらかしてたんですよ(笑)。でも、「任せる」と「ほったからす」はイコールじゃないことがわかるようになって、意識して「任せる」と言うようになったかな。「こうしてああして、こうやりなさい」と指示するよりは、「任せる」と言った方が成長できると思って。臼井さんも「がんばって」とか「あとよろしく」と言った方が響くし、腹落ちするタイプでした。ただね、すべての人がそうではなくて、順序立ててやり方を教えてあげたほうがやりがいを感じるという人もけっこう多いんです。一人ひとりをよく見て、アプローチを変えなきゃいけないね。
挑戦できる会社に、
求める人材
- 臼井
- 坂井建設は、挑戦できる会社です。しかも、失敗していいという前提つきなんですよね。失敗上等! 逆に何度でも失敗して、そこから学んでほしいという会社ですから、たくさん挑戦しない手はないでしょう?! 僕も挑戦していくし、社員にもいろんなことに挑戦してほしいですね。
- 坂井
- 失敗を責めないし、咎めない会社だからね。
- 臼井
- 僕も、坂井社長にそうやって接してもらいました。「任せる」「やってみな」って言ってもらって。
- 坂井
- もちろん成功すればやりがいを感じられるし、失敗からも成功からも成長できます。「任せる」と言えるのは、社是や基本理念に共感してもらえたら、自然とそこに繋がっていることをやりたいと思えるから。だから私は、社員が「やりたい」と言ってきたことに「NO」と返したことはほとんどないんじゃないかな。
- 臼井
- そうですね。それから、僕がそうだったように、自分を変えたいと思っている人こそ、この会社で働いてほしいと思います。学生時代の延長を惰性で生きるのではなく、いい意味で「変わったよね」と周囲に言われるようになったり、自分でも変化を実感できたり、そういうことを期待できる会社ですから。僕は、坂井建設に人生を変えてもらいました。
- 坂井
- 求める人材は、とにかく……
- 臼井
- ……明るく、楽しく、元気よく、プロ意識を持った人がいいですね。
- 坂井
- それに尽きるね。プロ意識はちょっと難しいかもしれないけど、明るく楽しく元気よくは、誰でもできることじゃないかな?
- 臼井
- 学歴とか、建築の勉強をしてきたのかどうかとか、そういうことは重視していません。明るく楽しく元気よく、笑顔で働いてほしいというのが願いです。出勤するのが楽しいと思えるような、そんな会社にできたらと思っています。